中耳炎
急性中耳炎
◆症状
激しい耳の痛み、発熱が中耳炎の主な症状です。特に小さな子どもでは、症状をうまく訴えられず、耳に手をやったり、ぐずったりします。大人では痛みや発熱のほか、耳がつまった感じや難聴も自覚します。膿が大量になると鼓膜に穴があき耳だれがでることもあります。また、炎症が内耳まで波及すると難聴、めまいを引き起こすことがあります。
◆原因は
風邪による鼻やのどの炎症が耳管という鼻の奥と耳をつなぐ管を通って中耳まで広がった時に起こります。小さなお子さんに多い理由は、大人と比較して、耳管が太く、短く、水平に近いため、鼻水の影響を受けやすいことと、鼻を上手くかむことができないためです。
乳幼児、特に集団保育(託児所や保育園)の場合は再発しやすく、重症化、難治化することもあります。
◆当院での治療
●薬物療法
原因となる細菌の増殖を抑える抗生剤(飲み薬や点耳薬)を使用します。熱や痛みがひどい時は、消炎鎮痛剤も合わせて使います。また、同時に鼻の治療も必要です。
●鼓膜切開
薬の治療だけでは治らない場合や、強い痛みや鼓膜が腫れている場合には、鼓膜に小さな穴を開けて膿を出す鼓膜切開を行います。
●耳の洗浄
耳だれがある場合は、消毒薬で耳の中を洗浄します。耳だれが止まるまでは頻回の洗浄が必要です。
◆ご家庭での注意点
●鼻水の除去
こまめに鼻をかみ、鼻水をすすらないことが大切です。片方ずつ押さえてかむ方法を習慣づけましょう。鼻水をかめないお子さんには市販の鼻吸器で鼻水を取り除いてあげることが必要です。
●鼻炎の治療
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があると中耳炎になりやすいために治療が必要です。特に黄色い鼻水が1週間以上続くと中耳炎になるリスクが高いので早めに受診しましょう。
●耳あかの除去
耳垢が多量にたまると中耳炎の原因となります。定期的に掃除をしましょう。
●水泳の制限
中耳炎になってしまった場合、耳に水が入る水泳は許可が出るまではひかえましょう。
●しっかり治ったことを確認してもらう
痛みがなくなっても、まだ膿や滲出液が残っていることがあります。不十分な治療では再発したり、滲出性中耳炎に移行することがあります。治ったかどうかの確認は非常に大切です。
痛みが消えても完治したわけではありません。痛みが治まっても聴力が低下している場合が多いので、しっかりと治るまで通院を続けましょう。
滲出性中耳炎
◆滲出性中耳炎とは
鼓膜の奥の中耳に液体がたまる病気で難聴が主な症状です。つまった感じやゴロゴロ音がすることもあります。お子さんの場合は、大きな音に対する反応が悪い、聞き返しが多い、呼びかけに返事をしない等の症状で気づかれることがありますが、難聴の程度が軽ければ周囲の人も気づかない場合があります。
◆原因は
急性中耳炎の後に続いて起こることが多く、鼻かぜや副鼻腔炎、アデノイドの肥大といった耳管を詰まらせてしまうことがおおもとの原因です。
◆当院での治療
●薬による治療
たまった滲出液を耳管から出しやすくするお薬を服用します。原疾患の治療で抗生剤や炎症を抑える薬を服用することもあります。
●耳管通気鼻から耳に空気を送り込み耳管の通りを良くします。
●鼓膜切開耳管通気を繰り返しても改善しなかったり、難聴が強い場合には鼓膜を少し切って、中耳にたまっている滲出液を出します。
●鼓膜チューブ留置たびたび再発を繰り返す時は、鼓膜チューブを留置し、中耳の換気をはかります。
◆日常生活の注意点
●鼻水の除去こまめにかみ、鼻水をすすらないようにしましょう。(鼻水をかめないお子さんは市販の鼻吸器で鼻水を取り除いてあげることが大切です。)
●定期的な通院定期的に受診し、聴力検査、チンパノメトリー(鼓膜の動きをみる検査)の検査をおすすめします。
●水泳の制限
鼻をかめないお子さんの場合には、習い事のスイミングは、症状を悪化してしまします。許可が出るまではお休みしましょう。
治るまでに時間がかかり、再発することも多い病気です。
症状がすぐに良くならない場合でも、医師の指示を守ってしっかりと根気よく治療を続けることが大切です。大変ですが、しっかりと通院しましょう。
慢性中耳炎
◆慢性中耳炎とは
急性中耳炎が治らず、耳だれが出続けたり、耳の奥の薄い膜(鼓膜:こまくといいます)に穴があきっぱなしになる中耳炎です。難聴や耳鳴りもおこることがあります。耳だれをほっておくと難聴がひどくなり生活に支障をきたすこともあります。
◆症状
鼓膜にできた穿孔から細菌が入り、耳だれ(耳漏)を繰り返します。また、穿孔のために伝音難聴が生じます。鼓膜の穿孔が小さければ難聴の程度は軽いのですが、穿孔が大きくなり、感染が続き、その影響が耳の中の神経にも及ぶと感音難聴や耳鳴りを引き起こします。聞こえの状態も、かなり悪化することがあります。
◆原因
子供時代に滲出性中耳炎や急性中耳炎を繰り返していたが、十分な治療を受けられなかったことにより慢性中耳炎に移行したケースが多いようです。
◆検査
鼓膜の状態の視診、細菌検査、耳のCTなどで診断します。聴力検査で聴力をみます。
◆治療
薬を飲んだり、耳の処置をすることによって耳だれは止まりますが、鼓膜に穴が開いているため、耳に水が入ったり、風邪をひいたりすると、耳だれを繰り返します。再発防止のためには、鼓膜の穴を塞ぐ手術が必要になります。手術をご希望の方は、適切な病院へご紹介いたします。
◆日常生活での注意点
鼓膜に穴が開いているため、感染を起こしやすい状態になっています。耳の中に水が入らないようにし、耳あかは耳鼻咽喉科で取ってもらうようにしてください。